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今年もよろしくお願いします。
 新しいこの一年が皆様にとってより良いものでありますように。

昨日もお知らせしましたが、こうしてBbsからBlogへと移行しました。
新規の試みでもあり、自分の好みでスタイルシートをカスタマイズしていますので、表示やシステムの不具合等ございましたら、お教えくだされば助かります。

最初からお願いで申し訳ないのですが、なにとぞよろしくお願いします。

それでは、Bbsでの予告通り、以下に傭一と柳の馴れ初めを書いておきます。
ご希望の方は「続きを読む」を押してください。

 

A boy meets a…….

 
 すべての物事には始まりと終わりがあって、その契機となる出来事も時流の中に存在している。俺が最も愛する人との始まりも例外ではなく、あとになって考えるならたぶんこれがそうだった。
「おい。そこで何をしているんだ」
 咎める声を放ったら、ほぼ全員がびくりとして動きを止めた。

 傾いた光の差し込む教室の中、眉根を寄せて俺は眼前の光景を見渡した。
 室内には五、六人の男子生徒が居残っている。彼らは皆俺の高校の同級生で、一人の生徒を取り囲むようにしていた。
「須賀だ……!」
「やば……どうする?」
「まずいぞ。逃げよう」
 明らかに怯えた顔で、連中は大慌てで逃げていく。俺はこのうえなく渋い気持ちで立ち去る連中の後姿を見送った。
 なにやってんだと追いかけて殴る気などなかったが、逃げるやつらは一人残らずそう思っていたらしい。
 何がきっかけで暴れ出すかわからない、凶暴で残忍極まりない男。高校生とは思えないほど裏の社会にはまり込んだ、札つきのやくざ予備軍。名誉毀損で訴えたくなる事実無根の中傷だったが、これらが高校二年の当時、俺にまつわる噂だった。
「転入早々びっくりしたな。だけど、そんなに気にすることはないんだぞ。連中は転校生がめずらしかっただけだろう」
 からかうだけの行為にしてはやり過ぎだとは思ったが、竦み上がっているはずの彼を気遣いそう言った。けれども独りその場に残された少年は少しも気にした様子がない。
 そんなはずはないのだが、と訝しく眉をひそめて、彼の姿をあらためて見回した。
 グレーのブレザーは前のボタンが外されて、片袖まで脱がされている。ネクタイは解かれて首の周りに垂れ下がり、シャツのボタンも二つ目まで外されていた。しかしその転校生はひどい格好を直しもせずに、俺の顔をじっと見ている。
 美しいという他に形容詞が思いつかない完璧な顔立ちを見返して、思わず俺の咽喉の奥から感嘆の唸りが洩れた。
 白磁のようになめらかな肌。繊細な顎の線。細く形の良い眉の下には、大きく澄んだ二重の眸。まっすぐ通った鼻筋と、珊瑚色の綺麗な唇。
 元々色素が薄いのか、明るい色調の髪と眸もあいまって、彼の性別を曖昧なものにしている。ユニセクシャル、もっと正確に言うのなら、ノンセクシャルが最も近い単語だろうか。 間近で見る十七歳の少年は、この年代によくあるような成長途上の不均衡さが感じられない。細身のラインは頭の上から足の先まで精緻に整った印象だ。彼は、他の汗臭い学生達とはまったく異なる、何か特別で不思議な生き物のように思えた。
「服。直さないのか」
 注意したが、転校生は凝視を解かない。じろじろ眺めるというよりも、貫くような眼差しだった。
 やむを得ず、その視線を受け止めたまま俺は両手を前に伸ばした。服装を整えてやろうと思っていたのだが、俺が触れた瞬間に震え上がって逃げ出すことも予想していた。

 けれどもその転校生は無骨な指がシャツのボタンに触れたときにも怯える表情を見せなかった。ネクタイを結び直し、片袖が脱げていたブレザーを元の通りに着せてやっても、平然としたままだ。
 こいつは警戒心が普通よりも不足している。
 俺はつい心配になってきて、言わなくてもいい説教をする気になった。
「お前なあ、嫌ならちゃんと嫌だって言葉にしないと駄目なんだぞ。黙っていたら、あんなふうに勘違いをしてくるやつだっているだろう」
 転校生は返事をしない。まんざら頭の回転が悪いようには思えないが。応答しないということは、無防備な様子に見えてもやはり俺を警戒しているのだろうか。
 それもまあ、よくあることでしかたない。俺は転校生に背を向けて、忘れ物のノートをロッカーから取り出した。教室を出る前になんとなく振り向くと、転校生と視線がぶつかる。
 その場から少しも動かず、不思議に綺麗な少年は俺の顔を見続けている。
 俺はふと、転校生の帰り道が気がかりになってきた。いったん逃げた連中が、もしも途中で待ち伏せをしていたら。
 余計なことかと思ったが、一度それを考えてしまったら、放っておけない気分になった。
「ええと。もしよかったら、俺が家まで送っていこうか?」
 そう持ちかけてもたぶん断る。その予想は、しかし外れた。
 転校生はうなずくと、相変らず俺を見たまま足を前に踏み出した。