驕慢な女のように、華やかに美しく、留まることなく欲望を抱く町。戦乱に明け暮れる地方をよそに、今夜も都は豪奢な頽廃をまとわりつかせ、嫣然と微笑んでいた。
「なるほど。これは確かに粒揃いだな」
座敷牢の格子の前で若者がうなずいた。
陽に焼けた凛々しい風貌。狩衣姿の若者は、きっと名のある一族の郎党に違いない。
そうと見定めた人買い商人は腰低く、
「どうぞどれでもお好きなものを。お望みでしたら、買われる前にお試しになられても結構でございます」
それじゃあ遠慮なく、と男は格子をくぐって入った。
美女と美童の間を抜けて、壁際に立たされていた人影の許へと歩む。
「こっちのやつも売り物か?」
「そうですが、お勧めは出来ませんよ。綺麗な顔ですが、噛みつきますし、暴れます」
商人の言うとおり、よほど凶暴なのだろう。見た目十三、四ほどの童子は、猿轡をかまされ、両手首には木の枷をはめられて、鎖で壁に繋がれている。
「暴れる悍馬を馴らしてみるのも一興だ。試した後で、気に入ったら買ってやる」
酔狂な、とこっそりつぶやき商人は承知した。
そいつをそこに繋ぐのに、三人の屈強な手下どもが噛み傷だらけになったのに。
男は悠然と童子の顎をつかみあげた。
「ふむ。いかにもきつそうな顔をしている。気位の高さは人一倍か? 先の戦で滅びていった豪族の若君でもあるまいに」
言って、童子の襟前をくつろげる。
「いい肌だ。手にしっとりと吸いつくようだな。それにここは桃色か」
胸を撫で、指先で乳首を摘む。
「男を誘う卑猥な色だ。こうして擦ると、薄紅色に変わっていくぞ。ん、なんだ?」
いやいやと首を振り、童子は必死に瞳で何かを訴えている。
男は笑って、その耳許に囁いた。
(戦にはついてくるなと言ったのに、勝手にくっついて来たあげく、海に落ちたお前が悪い。いいか、これはお仕置きだ)
商人が地方武士と見ていた男は、じつは西の海域を荒らし回る水賊の頭だった。
小豪族の若君をふとしたきっかけで助けた彼は、童子に朔夜の名を与え、自分の傍に置いていた。
「見かけによらず、いやらしい身体だな。下の方はどうなっている?」
言いつつ小袴の紐を解いて、小袖の前を開いてしまう。
「少し薄いが、俺はそのほうが好みだな。ここもちょうど手のひらにぴったり納まる」
柔らかな茂みを撫でて、童子のそれを掬うようにつかみ取る。
優しく強く扱き立て、先のほうからあふれたものでぐちゃぐちゃ隠微な音がするまでたっぷりと愛撫する。
身悶えて、反らした胸の先端を男が歯先でくわえて引くと、童子の口から喘ぎが洩れた。
「んん……っ……ん……んぅ……っ」
首の後ろで一つに束ねた髪が揺れ、動きにつれて鎖がガチャガチャ音を発する。
「根元までべたべただ。気持ちがよくて達きそうなんだろ。我慢せずに出してしまえ」
絶妙な指の動きに、とうとうこらえかねたのか童子が快感をあふれさせた。
濡らした手をわざわざ相手の目の前に持っていき、男は面白そうに笑った。
「ほら見ろよ。こんなに出たぞ。お前はもしかして、人前でされるほうが乱れるたちか?」
口を塞がれ、反駁が出来ないと知りながら、意地の悪い言を吐く。
「じゃあここも皆にじっくりと見てもらえ」
枷をつかんで後ろを向かせる。壁に手をつかせておいて、裾を背中までめくり上げた。
「もっと腰を突き出すんだ。そうしないと見えないだろう。そうだ。もう少し足を広げて」
両手の指で薄い肉を割り広げ、男がそこの部分を覗く。
「色は薄紅か。締まりの良さそうな形をしてるが……実際のところはどうだ」
濡れた指を突き込むと、くぐもった叫びが上がる。男はそこを容赦なく掻き回し、
「お前、男は初めてじゃないだろう。指を入れると奥まで誘い込もうとしてるぞ」
言葉でも嬲なぶられて、童子の瞳に涙が滲む。
最低な遣り口とわかっていながら、男の心中にはこんな行為でもしなければ決して癒えないものがある。
朔夜を見つけるまで、この三日というもの半ば狂う思いがしたのだ。
もしも朔夜がすでに生きていなければ、京を灰燼に帰してでも敵の一族を根絶やしにしてやる気でいた。
「その男はよほど熱心にお前の身体を仕込んだらしいな。さぞかしそいつが恋しいだろう」
感じるところを集中して攻め立てて、ぎりぎりまで追い詰めたのち、猿轡を取ってやる。
「俺をそいつだと思ってもいいんだぞ」
指を引き抜き、秘処に猛った男をあてがう。
一息に突き込むと、すぐさま律動を開始した。
「あ……あ、ああっ……ろ、六九郎……っ」
凶悪なまでの男の欲望に貫かれ、華奢な肢体が悲鳴を上げる。
過酷な責めは、穿たれ、こね回され、抉り抜かれた肉体がついに快感を噴き上げながら倒れていくまで続けられた。
男は鎖を止め具ごと板壁から引き抜くと、意識のない細い身体を自分の肩に担ぎ上げた。
商人の手の中に砂金の詰まった袋を投げて、
「これっぽっちじゃ味見にもならないな。具合はいいが、体力の足りない分だけ安くしておけ」